登山 行蔵の雑談日記

山登りが趣味のおじさんです。自分が好きな事、気になった事を雑記でつぶやいています。

大変化の時代「能力が無いのに出世する人」は何故絶滅しないのか?

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どう考えてもそんなに能力があると思えない人が、なぜか上司に引き立てられて出世する…という摩訶不思議な現象がある。世の中不条理なことだらけ、と言ってしまえばそれまでなのだが、どこの組織でもよく見聞きすることだろう。なぜ「上には気に入られるが、下からは支持されない」人が出てくるのか、先人の知恵を借りて考えてみたい。

 

まずは、“偉い人”がどういう思いで下の者を見ているのか。「偉い人の思考」についての古典中の古典、マキアヴェリの『君主論』(池田廉訳、中公文庫)をひもといてみよう。

 

 

マキアヴェリ君主論」に学ぶ

上に立つ者の頭脳3タイプ

 

マキアヴェリによると、およそ人の頭脳というのは3種類に分けられるという。

 

A   自分で考えをめぐらせることができる

B   自分は考えず、他人に考えさせて良しあしを判断   する

C   自分は考えず、他人にも考えさせない

 

君主の能力としては、Aが最良で、Bがそれに続き、Cはだめだとマキアヴェリは言う。

 

さて、この分類をもとに、それぞれの君主がどのような部下を求めるのかを考えてみる。

 

君主の頭脳がAの場合

ここで求める人(部下)の特徴は、自分が何かを考える際に必要な(1)正しい情報をタイムリーに伝えてくれる人であり、(2)自分が決めたことを実直に遂行してくれる人である。

場合によっては(3)自分の意見の正しさについて(正しくない場合も含め)意見を表明してくれる人を求める場合もあるが、(3)はよほど優秀な人でなければ務まらないだろう。

 

次に、君主の頭脳がBの場合

 君主は自分の頭ではどうすべきかの選択肢を大して深くは考えていないから、(4)具体的な選択肢にまで落とし込んだ提案をしてくれる人を欲することになる。もちろん、意思決定の後には(2)自分が決めたことを実直に遂行してくれる人が、この場合にも重宝される。

 

さて、君主の頭脳がCならばどうであろうか。 

こういう君主は状況に身を任せて漂っているだけの存在である。環境に追い込まれて何かせざるを得なくなるまで何もしたくないので、普段は(5)一緒にいて気持ちのよい人を重用することになる。いわゆる“お友達”である。

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下の者に「開かれすぎた」君主は、地位を脅かされる可能性も!

さらにマキアヴェリは権力者におべっかを使い、ヨイショする、「お追従者」の問題を指摘している。

 

自分の利益のために、君主にこびへつらう者を(そうだとわかっていても)よき者として認識してしまう問題である。これについては巧妙に避けなければならない。マキアヴェリが言うには、「お追従者から身を護る手段としては、真実を告げられても決して怒らないと人々に知ってもらうしかない」。

 

ところが、誰もがその君主に真実を話しても構わないという状況をつくってしまうと、君主への尊敬の念が消えてしまう。下の者に率直に語ってもらうことのよさはわかりつつも、君主がそれをひとたび多くの人に許してしまうと、君主への尊敬の念がなくなり、統治に悪影響を及ぼすというのである。

 

確かにそうだろう。下の者に何を言ってもいい自由を与えると、下手をすれば、下の者が見える限定された範囲での小さな良しあし(個人的損得)だけが重要視され、あっという間に自分の周囲は不満を言う者ばかりになる。そうすると、君主の威信は崩れ去る。君主の地位とは絶対的なものでなく、かくも脆弱なものなのである。

 

ここで  君主 (上の)から見て有用な人材をまとめると

 

(1)正しい情報をタイムリーに伝えてくれる人
(2)自分が決めたことを実直に遂行してくれる人
(3)自分の意見の正しさについて(正しくない場合も含め)意見を表明してくれる人
(4)具体的な選択肢にまで落とし込んだ提案をしてくれる人
(5)一緒にいて気持ちのよい人

 

それらとは別に「お追従者」もあるが、ここはいったん(5)のなかに含めて考えておきたい。

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下から支持されるリーダーが持っている、上の者としてのスキルとは?

では、逆に下から支持される人とはどのような人だろうか。

 三隅二不二のPM理論を使って考えてみよう。この理論によると、リーダーシップは、P:Performance「目標達成能力」とM:Maintenance「集団維持能力」の2つの能力要素で構成される。

 

目標設定や計画立案、メンバーへの指示などにより目標を達成する能力(P)と、メンバー間の人間関係を良好に保ち、集団のまとまりを維持する能力(M)の2つの能力の大小によって、4つのリーダーシップのタイプ(PM型、Pm型、pM型、pm型)を提示し、PとMが共に高い状態(PM型)のリーダーシップが望ましいと結論づけている。

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 ここでいえるのは、P「目標達成能力」とM「集団維持能力」の2つの能力をバランスよく持つ人が、リーダーとして支持されるということである。

 

上の人のMが高いと、安心して仕事をする環境が確保されるため、初めの頃は下の者から見た上司の評価は高くなる。しかし、Pの能力が劣ると、成果は出ない。成果が出なければ会社からの評価も下がるため、結局のところは下の者からの支持を失ってしまう。一方で、Pの高い人は、成果を上げることへの強い意志があり、それゆえに成功する可能性も高くなるが、Mについて無関心だと、人心が離反して組織崩壊につながることもある。

 

さらに、Mに包含されるともいえるが、特に特筆すべき重要な能力に、組織が出した結果を「公平に評価する能力(E:Evaluation)」と「(成果に対する)報酬を適切に分配する能力(D:Distribution)」がある。

 

 不公平で偏った人事考課しかできない人は嫌われ、成果で得た報酬(お金や昇進だけでなく、社内での評判なども含む)をメンバーが納得する形でしっかりと分配できない者(独り占めするもの)などは、下からまったく尊敬されない。

 

これらをまとめると、下のものから見て支持される上のカギとなる指標は、

P「目標達成能力」
M「集団維持能力」
E「公平に評価する能力」
D「(成果に対する)報酬を適切に分配する能力」

となる。

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偉い人の覚えは良いのに、下からは嫌われる人

ここまで2つの方向から考えてきた、下の者としての特性と、リーダーとして必要な能力を掛け合わせてみる。 そのうえで、「偉い人の覚えはよいのに、下からは嫌われる」という特徴の組み合わせの代表的なものをいくつかピックアップすると、このようなものがある。

 

評価独り占めタイプ

【下の者としてのあり方】(1)正しい情報をタイムリーに伝えてくれる人 × 【上の者としてのあり方】評価能力(E)、報酬分配能力(D)の欠如

 

先を読む力があり、また現場をしっかりと把握していることから、上の目線に合わせて重要な情報をタイムリーに伝えることができる。しかしながら、分配面で自分だけ評価を得ようとしてしまい、下からの支持を得られない。上から見ると確実に現場の情報を伝えてくれて頼りになる存在だが、下から見ると自分たちのことはそっちのけで上ばかり見るヒラメタイプで、手柄を独り占めしようとする嫌みな人である。

 

鬼マネージャータイプ

【下の者としてのあり方】(2)自分が決めたことを実直に遂行してくれる人 × 【上の者としてのあり方】集団維持能力(M)の欠如

 

集団としての目標達成を目指し、どれだけ現場に負担が大きくても、どうにか遂行する。しかしながら、それが長期になるとだんだん現場メンバーが疲弊し最終的に集団の維持ができなくなってしまう(同時に、評価、分配の問題が起きることもある)。特に働き方改革の現在は、この鬼マネジャータイプが下からまったく支持されない。

 

頭でっかちインテリタイプ

【下の者としてのあり方】(3)自分の意見の正しさについて(正しくない場合も含め)意見を表明してくれる人 × 【上の者としてのあり方】集団維持能力(M)、評価能力(E)、報酬分配能力(D)の欠如

 

上の視点で戦略や事業の方向性について考えをめぐらせることは得意だが、自部署の集団維持や評価、分配などに興味が薄く、人望がない。下からの支持を得られない。下から見ると包容力や人的魅力のないインテリである。

 

凡庸なヨイショタイプ

【下の者としてのあり方】(5)一緒にいて気持ちのよい人 × 【上の者としてのあり方】すべての能力の欠如

 

上の人から見ると、一緒にいること自体が満足感を与えてくれる楽しい存在であるが、目標達成、集団維持、評価、分配などの諸能力において問題があり仕事ができない。しかしながら、権力者のお友達であることから、誰も文句が言えないし排除できない。

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「下からも評価される人」になるにはどうすれば良いか?

これらの人たちは、ちょっとした指導や対処法で、部下に与える影響も、何より会社への貢献度も大きく変わる。

 

「評価独り占めタイプ」については「部下の○○が頑張って調べてくれたおかげで、こんな情報が得られました」というように、部下の名前や具体的な実績を上に報告するように心がけるだけで、一気に下からの評判が変わる。しかもそう言ったからといって、上からの評価が下がるわけではない。それどころか、優秀な部下を持っており、かつ、その部下の能力を引き出し、正当に評価していることはプラスに評価されるので、自分自身の評価も上がるのだ。それを知らないだけで、症状は意外と軽い。

 

「鬼マネージャータイプ」については、既存の方法の強化だけではなく、無理なく目標達成ができるような戦術を(他人の知恵も借りながら)工夫するという方向に変えるよう誘導することで、評判も大きく変わる。ワンパターンの限界を知恵と工夫で乗り越えるようにしていくのだ。変化に大きな苦痛が伴うものの、若い時期に指摘してやれば十分に変わりうる。

 

「頭でっかちインテリタイプ」については、メンバーに対する興味関心の度合いがもともと低く、変化させるのは難しい。興味がないものに興味を持てと言っても難しいのである。むしろ偉い人のブレーンとしての企画立案業務に異動させるほうが当人にとっても会社にとってもよい。ブレーンの職場では、知的生産力に基づいた人間関係がつくられるので、卓越した見解を常日頃から表明できれば下からも十分に尊敬されうる。向いていない仕事を続けさせないという配慮が最適解となる。

 

このように、現段階においては「偉い人の覚えはよいのに、下からは嫌われる人」であるが、本人の努力次第で、場合によっては部下からも「慕われるかもしれない」という大きな成長余地を残している。ちょっと指導するだけで、会社に大きく貢献してくれるはずだ。

 

「凡庸なヨイショタイプ」が組織を腐らせる!

 

さて問題は「凡庸なヨイショタイプ」である。結局、古今東西の組織には、上の者にこびへつらい、実力者に取り入るお追従者がいる。職務の遂行能力がなく、下から支持されないにもかかわらず、大きな顔をしてのさばっている。

 

では、そのような人が本当に下から総スカンをくっているかというと、実はそうでもない。今度はこの人に取り入るお追従者がたくさんいて、幅を利かせている。純粋に仕事で成果を出さずとも、相手を気持ちよくさせるだけで、権力のおこぼれにあずかれるのだから楽なものである。

 

マキアヴェリは言う。君主にとって、「秘書官を選定することは決して軽々しい仕事ではない」。

ある君主の頭脳の良しあしを推測するには、最初に君主の側近を見ればいい。側近が有能で誠実であれば、その君主は聡明だと評価して間違いない。それは君主が彼らの実力を見抜ける人であり、彼らに忠誠を誓わせるだけの度量があるということだからである。ひるがえって、側近が有能でなければ、どうあってもその君主によい評価を与えるわけにはいかない。なぜなら、君主は側近を選ぶという大事な局面で最初の失敗をしたからである――。

 

世の中の組織を見渡してみると、やる気のある下の人たちから、まったく評価されていない、単なるお追従者に大事な職務を任せている組織のいかに多いことか。「最初」に大きな間違いをしている組織は、いかに立派な戦略を立てても、優秀な外部人材をスカウトしてもよくならない。

トップがすべきは、自分の頭でものを考え、「上の覚えはよくても、下からは嫌われる人」を発見し、単なるお追従者であれば、その人や、さらにその人に付き従うようなお追従者も含めて、「バッサリ切る」ことである。それができるだけで、会社はずいぶん変わるのだ。

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