あと少しだ、がんばろう!
涸沢カールに雲がかかってるが、遥か下の方に涸沢ヒュッテとテント村が見えている!
上高地の河童橋から見える涸沢カールを穂高連峰の稜線を歩きながら進んでいる事になるが、明日の夕方には私が河童橋からこの稜線を見上げているのだろうと思うと今、自分がここにいる事が不思議に感じる。
そんな事を考えながら急いでいると、また険しい岩場が目に入ってきた。
1人の登山者が前を登っているようだが、私とは登るスピードが違うので、すぐに見えなくなってしまった。今は午後13時30分くらいで、槍ヶ岳を出発したのが朝の6時前だったから7時間30分くらいかかっている事になる。標準タイムなら約8時間のルートだが休憩を多く取ってるから、かなりオーバーしそうだ。
なんとか15時くらいには穂高岳山荘に着きたいが、岩登りをする体力がかなり落ちているようで
降りはいいのだが、登り返しがかなりキツイ!
せめて、前を登っている登山者の姿でも見えれば、目印にして進んでいけるのだが、それも見えない。やはり午後からはガス(雲)が発生してくるので、目の前の山も山頂付近はガスの中に入ってしまっている。
おそらく、目の前にあるのが涸沢岳(3110m)だろうが、かなりバテバテなので、脚が前に出ない。
一瞬ガスが晴れて、涸沢岳の山頂が見えた。
数名の登山者が山頂に立っているのが見える。
よし!あの場所まで急ごう!
気力が湧いてきた。
何となく話声も聞こえくる距離になった。もう少しだ。がんばれ👍
よし涸沢岳(3110m)の山頂にたどり着いた。下の方を見ると穂高岳山荘が見えている。その向こうには奥穂高岳(3190m)と、その奥にジャンダルム(3163m)も見えている。
あとは穂高岳山荘までつづら折りの道を降りて行くだけだ!
着いた〜穂高岳山荘に到着!
とにかく疲れた。すぐに受け付けを済ませたいが、ちょうど時刻が15時過ぎで、かなり混雑している
(穂高岳山荘は涸沢からザイテングラートを登ってきた登山者や、西穂高からジャンダルムを超えて縦走してきた登山者、私のように槍ヶ岳や、涸沢から北穂高岳に登ってからここまで来た登山者など、多くの登山者が宿泊する事が多い山小屋である)
ザックを置いて待っていると受け付けが空いたので、すぐにスタッフの方に予約している事を告げて宿泊手続きを済ませた。荷物を自分が泊まる部屋に置いて、行動食のナッツとビールを買って山荘の表に出て、外の空気の中で1人で祝杯をあげる。
1人でビールを飲んで🍺いると、目の前の雲の中にブロッケン現象と自分の影が映ってるのが見える。
初めて見たが不思議な現象が起こるものだ。
その時に、LINEに連絡が入ってきて、私の山登りの師匠も穂高岳山荘に到着していると書いてある。
2年ぶりの再会であるが、師匠が泊まる予定の部屋に見に行くと隣にいた老夫婦と話し込んでいたので、しばらく待っていたらこちらに気がついたので、再会を果たした祝杯を改めてあげる。
そのあとは、ビールを飲んで夕食の時間になってからは一緒に食事をしてから、また飲んでかなり酔いが回ってきたので、少し外に出て冷たい風にあたりに行くと、ちょうど夕日が雲海の中に沈んでいく時間だった。
その日は、その後すぐに寝てしまい。朝眼が覚めると5時になっていた。
前日の夕食の時に、明日の出発時刻を7時にする事を師匠と打ち合わせしていたので、慌てずに準備を済ませて朝日を見るために外に出た。
オレンジ色の太陽が雲の中から現れて、奥穂高岳と涸沢岳も薄くオレンジ色に染まっている。
すごく気持ちの良い朝だ!
今日も天気は良いらしいので、朝食を食べてから今日のルートの再確認を師匠と話す。
今日はこの後、奥穂高岳に登ってから馬の背(切り立ったナイフリッジの難所)〜ロバの耳〜ジャンダルム〜天狗のコル〜天狗沢を降って〜岳沢小屋〜上高地に下山のルートを選んだ。
奥穂高岳山頂からは、涸沢岳山頂もジャンダルムも綺麗に見えている。素晴らしい朝だ。
しばらく奥穂高岳山頂で写真を撮ってから、馬の背に向かう。
馬の背は両端が切り立った崖になっており、人が通れる幅が50cmくらいしかない(落ちれば怪我だけでは済まない)慎重に掴む岩を選びながら降りて行く。かなり怖いが落ち着いて足運びと掴む岩を選べば大丈夫である。
馬の背を超えてから、周りの景色を見ると焼岳やその遥か先には乗鞍岳(3026m)、左の方には吊り尾根と前穂高岳(3090m)、その遥か彼方には富士山(3776m)の頭も見えている。
感動する景色が見れた!
これだけ遠くまで景色が見える事も、あまり無いと思う。
さて、目の前にはロバの耳(難所の一つ)とその先にジャンダルムが見えている。
前を登っている師匠に置いていかれないようにしっかり着いて行く。
ロバの耳を超えて行くと、いよいよジャンダルム(ジャンダルムとは、主峰(穂高連峰では奥穂高岳)を守るかのように山稜上に立ちはだかる搭状の岩峰で、すべての登山者を跳ね返す最強の憲兵の意味。海外の高山などでも攻略が難しい難所ではこの名前が付いている。ゆえにジャンダルムの攻略は登山者の憧れでもある)の足元の岩の壁に到着した。
ここを直登することが、今回の最大の冒険であるが勇気を出して登りだす。(ジャンダルムは正しい巻道が有りますので、決して無謀な直登などはしないでください。落ちたらほぼ確実に死んでしまいます)前回も直登で登っているがやはり緊張して身体が硬い。
なんとか無事登りきって山頂で写真を撮ってもらい。下に置いてきたザックを取りに行ってから天狗のコルに向かって行く(ここからはひたすら降りになるけど、岩の壁を降って行くので落ちないようにしっかり3点支持で身体を支えながら降りて行く)
無事に天狗のコルまで降りて来た。
ここで少し休憩してから天狗沢を降って岳沢小屋に向かう。
天狗のコルから、今降りて来た斜面を見ると、かなりの角度に見える。
こんな岩の壁を降りて来たのか?と感じながら天狗沢を降り始める。
(天狗沢は沢全体がガレ場で大小の岩が転がっているため、どこを通っても踏んだ岩が次から次へと崩れてしまうので細心の注意で降りないと危険)
1時間30分ほどで岳沢小屋に降りて来た。
ここで水を補充してから上高地まで降りて行く。
来年は、今日通ってきたルートを逆に登って行こうと計画を考えながら歩いて行く。
岳沢小屋から上高地までの道にはポイント毎に案内板が設置されてるので、迷う事は無いし風穴(冷たい風が吹いてくる洞窟)などもあって写真などを撮りながら上高地まで降りて行ける。
そして16時前に上高地まで降りて来た。バスターミナルに到着してバスの発車時刻を調べると後15分後に発車しますと係りの方が説明してくれた。
トイレにだけ急いで行ってバスに飛び乗って、車を止めてある駐車場に向かう。
途中でバスを乗り換えて新穂高温泉まで行って久しぶりに愛車に乗って(3日しか経ってないがもっと時間が過ぎたような感覚)帰路に着いた。
最後まで読んでいただきまして、本当にありがとうございました😊長々と登山の話をしてしまいました。
今回の登山は1日目だけは天気が悪かったけど、あとは晴天に恵まれて、素晴らしい景色を見ることができました。
大自然の雄大さに感謝して、この物語を終わりたいと思います。
またいつの日か、お会い出来る日を楽しみにしております。
おしまい!