完璧主義に陥る罠には2つの種類がある。
一つは頭の中で、ひたすら考えぬけば最適解が得られるであろうという誤解
この誤解に囚われてしまうと、頭の中の仮説を実社会で検証しようとはせずボトムアップよりもトップダウン方式に重きを置く判断をしてしまう。
2つ目は、失敗への恐怖。
人は自分の失敗を見つけると、隠したり始めからなかった事にしようとする。
これは完璧主義者ならさらに極端になる。
失敗を無くそうと、頭の中で考え続けて気がつけば「今から欠陥を見つけても、すでに手遅れ」という状態に陥っている。
これが「クローズド・ループ現象」と呼ばれる。
失敗への恐怖から、閉ざされた空間の中からは決して出ようとはぜず、同じ場所でグルグルと周り続ける。
とある実験の報告がある。
ある陶芸クラスの生徒が2つのグループに分けられ一つのグループは「量」で評価し、もう一つのグループは「質」で評価すると告げられた。
「量」のグループは最終日に全作品を提出し、各自総量が23kgならA、18kgなら Bと評価される
「質」のグループは質のみの評価なので、自分で最高だと思う作品を一つ提出すれば良い。
結果は、全作品中もっとも「質」の良い作品だったのは「量」を求めたグループだった。
つまり「量」のグループは、実際に作品を次から次へと作って試行錯誤を重ね、少しずつ上達していった
しかし、「質」のグループは最初から完璧な作品を作ろうとするあまり、頭で考える事に時間を使い過ぎてしまった。
結局、後に残ったのは壮大な理論とねんどの山だけであった。
似たようなことは日常でも起きている、あまりにも頭の中で考えすぎてしまい時間を浪費する割には、何も得られない。
本来ならやるべき事は、検証作業であり何をどうすれば質が高まるのか、何が役にたって何が無駄なのか?一つひとつ実際に試していくしかない。
もちろん試した数だけ失敗も増えるだろうが、だからこそ多くのことも学べる。
早い段階で試行錯誤するプロセスは、I T革命とともに現れた「リーン・スタートアップ」(小さく始める)というアプローチに通じる
その根本は、非常にシンプルで、検証と軌道修正を繰り返す。
とりあえず早い段階で試作品(MVP)を作り、アーリアダプター(新しい商品やサービスなどを早期に受け入れ、消費者に大きな影響を与える存在)の反応をみて仮説の検証を試しながら完成度を高めていく。
M V Pが完成品に近いのに、アーリーアダプターが興味を示さない場合は、そのスタートアップ計画自体を破棄するほうが、時間も資金も大きく節約でき重傷を避けられる。
仮にM V Pが大当たりすれば、「どう改良すれば良いのか?」を考えていけば良い。
IT起業家は、夢の中でも難解な数式を繰り返せる素晴らしい理論家であることが多いが、そんな能力だけに頼ることはなく進んで失敗を繰り返す。