登山 行蔵の雑談日記

山登りが趣味のおじさんです。自分が好きな事、気になった事を雑記でつぶやいています。

【戦略的思考】戦略は人間の弱さを突け、ナポレオンが攻撃力を高められた秘密

フランス革命戦争において、怒涛の勢いで勝利を収めたナポレオンの軍隊にはどのような秘密があったのか?そこには「人間の基本的な弱さ」を知り尽くした、秀逸な戦略が隠されていた。

人間は本来、弱い存在だからこそ戦略が必要

孫子アレクサンダー大王から最新のアダプティブ戦略まで、過去3000年間の戦略を俯瞰すると、特定の戦略は『人間の基本的な弱点』に注目していることがわかる。

 

アレクサンダー大王は東方大遠征で何度も部下の進軍への意欲を駆り立てなければなりませんでした。勇猛果敢なマケドニア兵たちでさえ、聞いたこともないような遠方まで出征する意義を理解できず、進軍を止めて故郷に帰りたがったからです。

 

フランス革命以前は、貴族の命令で傭兵の軍隊が戦闘をしており、雇われて戦う兵士たちは自分の利害と関係ない雇用主による戦争で傷つくことを避け、どちらかといえば激戦になることを意図的に避けるような緩慢な戦闘を繰り返した。

 

【人間の基本的な弱さを示す6つの例】

①・今までやってきたことをスパッと切り替えられない

②・人の情熱は続けることが難しい(特に挑戦的なことは)

③・他人から無理に命令されたことに情熱を傾けられない

④・複数同時に目標を追いかけることが苦手

⑤・時間が経過すると過去の失敗を都合よく解釈する

⑥・目標のための組織ではなく、組織のための目標を作り上げる

 

今まで上手くいってきたことから手を離すのは誰にも難しく、人間が機械ではなく生きているがゆえに、一人の人間は複数同時に目標を追いかけることはどうしても苦手です。

 

上記の6つの基本的な弱点は、感情と自我のある人間であれば誰もが(程度の差はあれ)持っているものです。逆に言えば、それに気がついた戦略家は人間の基本的な弱点を突くことで勝利を得る方法を繰り返し、相手の弱点に乗じることで優位を築いてきたのです。

 

チャンドラーの組織戦略と、ナポレオンの軍団制度がなぜ似ているのか

世界的な名著『組織は戦略に従う』の作者であり、歴史学者のアルフレッド・デュポン・チャンドラーは、企業が膨張をする過程で単一の指揮系統ではコントロールが利かなくなり、事業部制が発生したことを企業史の分析から解明し世界に衝撃を与えました。

 

化学メーカーとして有数の歴史を誇る米デュポン社は、第一次世界大戦の特需で従業員が何倍にも急増する好景気を体験しますが、戦争が終結したときのことに思い当たり、生産設備の有効活用を狙って、事業多角化を目指します。

 

ところが、過去体験したことのない新たな製品分野への進出で、当初名門デュポンは大きな痛手を蒙ります。事業多角化をはじめて数年は、ライバル企業が好調な年でも大幅な赤字を出し続けてしまったのです。これは、中央部がすべての事業の計画を管理できなかったことが理由でした。

 

フランス革命で「人間の自由と平等」が歴史上初めて民衆により掲げられましたが、王族と貴族の身分制度を守りたい周辺諸国は、一斉にフランスに宣戦布告をします。

 

そのためフランス軍は一国ではなく多数の国と同時に戦闘を行う必要に迫られ、個別に独立作戦を展開できる組織『師団』を作り上げました。これは、補給部隊なども独自に持っていることで、個別の作戦にその戦闘単位が最適の作戦を立案できるようにするためです。ナポレオンは師団制度をさらに改善し、「軍団制度」を生み出して欧州を圧倒します。

 

歴史研究家のチャンドラーと、フランスの皇帝になったナポレオンが共に気づいていたであろうことは「一人の人間(一つの組織)は複数のことに精密に集中できない」という真理です。目標が複数あれば、それを単一の組織で賄うのではなく、組織を正しく分割して目の前の役割に集中できる状態にすべきなのです。ナポレオンの軍団制度が、多数の敵軍を相手にした遠征攻撃力を格段に高めたことは、彼が制覇した諸国の数を見れば明らかでしょう。

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同じ人間でも、指導する上司で成果とエネルギーは雲泥の差になる

最近は言及されることが少なくなった「人の可能性」ですが、上司がなかなか認めたがらない点として、同じ部下でも指導する上司によってその人物が発揮する才能やエネルギーは格段に違うという現実があります。

 

フランス革命が「自らの自由と平等のため」に全力で戦う国民軍を生み出したことで、王族に雇われた傭兵軍団を圧倒したのですが、元マッキンゼー社のコンサルタントであるトム・ピーターズが書いた『エクセレント・カンパニー』でも、人間が持つ熱意がどれほど企業の業績を変えるか、いくつもの事例を引き合いに出して分析をしています。

 

また、指導する部下だけでなく私たち自身の仕事への姿勢、周囲の同僚とどのような関係を築くかでも、仕事の成果は劇的に変わります。しかし、人はえてして相手の弱点、欠点に目を向けてしまいがちです。

 

ところが、誰もが万能のスーパーマンではないこの社会で、人が組織で仕事をする最大の理由は「個人の強みを取り出し、弱みや欠点を無効化する」ことです。弱いところや苦手なところを、組織の誰かに補ってもらうことで、人は自らの強みを発揮することに集中できるからです。

 

ところが人間の感情的な部分は、どうしても相手の欠点に注意を集中し、相手の間違いや弱みを非難する行動を取らせがちです。さらに言えば、人の能力や付加価値を低く見積もり「この程度しかできない」という見切りを前提にして相手を扱いがちです。

 

結果として相手の弱みや欠点に(私たち自身が)着目することで関係性を破壊し、相手の潜在能力を低く見ることで、相手から強みと意欲を引き出すことができないのです。

 

優れた組織戦略や教育の戦略は、卑屈な人間感情とは違う角度での行動様式を生み出しており、優れた上司が部下から予想以上の能力を発揮させるように、人間の基本的弱点を飛び越えて成果を生み出しているのです。

 

他者を尻目に、勝ち続ける人たちの戦略の特徴

ここまで見てきたように、人間は感情の生き物であるがゆえに、基本的な弱点や欠点をいくつも持っています。人間は経験から学ぶと同時に、経験によって年老いていくのですから、これに正しく抗うためにはやはり優れた処方箋が必要になります。

 

さてもう一度、人間の基本的な弱さを示す例を振り返ってみましょう。

【人間の基本的な弱さを示す6つの例】

①・今までやってきたことをスパッと切り替えられない

②・人の情熱は続けることが難しい(特に挑戦的なこと)

③・他人から無理に命令されたことに情熱を傾けられない

④・複数同時に目標を追いかけることが苦手

⑤・時間が経過すると過去の失敗を都合よく解釈する

⑥・目標のための組織ではなく、組織のための目標を作り上げる

 

過去を積み重ねてきたことで、小さな勝利を手に入れている人たちは、その経験にこだわるあまり、新たなことに一歩を踏み出すことができません。組織が構築されたことで、何らかの特権的な立場や強権を手に入れた人は、新たに出現した正しい目標によって自分の組織が分断されることを望まず、必要な目標を潰し、自分の組織に有利な目標を敢えて立ててしまうことさえあります。

 

一方で、現代では「プロジェクトのためにチームを毎回組み上げる」ような柔軟な組織構造の企業も増えています。これは組織による権力を許さず「成果を上げることでのみ」権力やリーダーシップが発揮されることを狙っているからです。

 

古い既存の組織は、自らの枠組みを超えるような新たな目標が立ち上がることを嫌う傾向があります。その新目標の重要性が明らかになると、自分達の重要性が脅かされるように感じてしまうからです。

 

世の中には、新たなプロジェクトが立ち上がることを熱望する企業もあれば、それを忌み嫌う企業もあるのですから、前者が後者を尻目に勝ち続けるのも、当然のことだと言えるのです。

 

 

人間の基本的な弱みに付け込み、相手を撃破せよ

人類3000年の戦略を分析し俯瞰する中で、いくつかの戦略が「人間の基本的な弱点に付け込み、その弱さに足を引っ張られる相手を撃破する」構造を持つことがわかりましたが、それらの点に着目している戦略は、比較的シンプルでありながらその破壊力は絶大です。

 

理由は私たちが人間である限り、常についてまわる弱点を逆利用しているからです。基本的な弱点を補うことを放棄すれば、いつかその弱点を完璧に克服している個人か組織に敗れます。現代は、あらゆる分野に異業種が進出する混戦の時代でもあるからです。

 

戦略理論は高度で複雑であれば良いものではなく、個人や組織が凡庸な成果と低い勝利のレベルから抜け出し、より望ましく、より大きな成果を手に入れる効果こそが重要です。

 

人間の基本的弱点に注目した戦略は簡素です。だからこそ皆が軽視しがちです。しかしながら人間の基本的弱点に着目した戦略の効果を学んでおくことは、日々の業務で無視できない差を積み上げていくことになり、私たち個人や組織にやがて大きな差を生み出してくれる極めて重要な武器なのです。

 

ではまた。See you next time・・・