登山 行蔵の雑談日記

山登りが趣味のおじさんです。自分が好きな事、気になった事を雑記でつぶやいています。

【戦略の選択】最善の戦略を見極めるための戦略は何か?

BCGの「戦略パレット」活用法

 

古今多数の戦略フレームワークを、どう選び活用すればいいいのか。BCGの戦略エキスパートが、事業環境と戦略を「伝統型」「適応型」「形成型」「先見型」「再生型」の5体系に整理し、それぞれに応じたアプローチの選択・実践法を伝授する。あなたのビジネスにはどの戦略が適しているのか、それをいつ、どのように実行すべきなのかを示すものだ。

 

変化のスピードが飛躍的に上がっている今の時代では、計画サイクルが年度ごとでは時代に合わなくなった場合、代わりにどんな方法を取ればいいのか。どの環境、どのタイミングであれば、競争のあり方を自社に有利となるよう変えられるのか。複数の事業要素に対して異なる戦略を同時に実行するには、どうすれば良いのか。である。

 

巷には、競争優位の実現を謳うベストセラー本やベストプラクティスが溢れ、企業幹部は翻弄されている。しかし、これらの理論や手法には互いに矛盾するものも多い。目指すべきはスケールか、スピードなのか、ブルー・オーシャンを開拓し、適応力を高め、勝利を目指すべきなのか。それとも、持続可能な競争優位など忘れてしまった方が良いのだろうか。まさに1日ごとに不安定さと複雑さが増すなか、適切な戦略アプローチを選ぶことの重要性はいまだかつてなく高まっている。

だが、その戦略が今ほど難しい時代もない。1960年初頭に経営戦略が生まれて以降、企業リーダーが選べる戦略のツールやフレームワークの数は飛躍的に増えている。問題は、これらの戦略は互いにどう関連しているのか、そして採用すべき時、してはいけない時はいつなのか、である。

 

とはいえ、戦略を導き出す強力なアプローチが無いわけではない。欠けているのは、適切な戦略を適切な状況で選択するための確固とした方法だ。ある状況ではファイブ・フォース(5つの競争要因)分析が有効かもしれないが、別の局面ではブルー・オーシャン戦略やオープン・イノベーションが有効かもしれない。しかし、これらの戦略はいずれも、それだけで万能薬であるかのように言及・認識されがちである。

 

経営者とビジネスリーダーはジレンマに陥っている。対応すべき環境がますます多様化し、正しい対応がいっそう切実に問われるなか、最善の事業戦略を見極めるにはどうすれば良いのか。適切なフレームワークやツールを用いてそれを採用・実行するために、どのように考えて動けばいいのだろうか。

 

事業環境の激変と多様化という二重の課題、そして戦略の氾濫への対応策として、戦略を選ぶための総合的フレームワークである「戦略パレット」がある。これはリーダーに次のことを可能にするために策定されている。

 

それは目の前の状況に見合った戦略スタイルを選び、効果的に実行すること。複数の環境あるいは変動的な環境に対応するために、異なる戦略を組み合わせること。そして、出来上がった「戦略のコラージュ」に、リーダーとして命を吹き込むことだ。

 

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戦略パレットは5つの典型的な戦略スタイル、いわば5つの基本色で構成されている。これらは地域、業界、機能、企業ライフサイクルといった事業要素ごとに、それぞれの環境に合わせて適用できる。

 

5つの戦略環境

戦略とは本質的に問題解決であり、現在抱えている具体的な問題が何かによって最善の戦略は変わっつてくる。そして自社の置かれた環境が、戦略スタイルを左右する。つまり、まず環境を吟味した上で、それに見合うスタイルを見つけ、適用する必要があるのだ。

 

だが、事業環境というもののあり様は、どう表せばようのだろうか。また、勝利への道筋を示してくれる最善の戦略を、どう選び出せばよいのだろうか。

 

事業環境は、簡単に識別できる3つの次元によって左右される。

1・予測可能性(将来の環境をどれほど予測できるか)

2・改変可能性(独力、あるいは他社と協働して、環境にどれほど影響を及ぼせるか)

3・過酷さ(自社はその環境で生き残れるか)

である。

これら3つの要素をマトリックス化すると、5つの異なる環境が浮かび上がる。各環境にはそれぞれ固有の戦略スタイルと、その実行方法が求められる。

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以下で示すように、各環境にはそれぞれ異なる戦略スタイルが適している。

 

予測可能な「伝統型(Classical)」の環境は、ポジショニング戦略と相性が良い。つまり、規範、差別化、あるいはケイパビリティで獲得できる優位性をベースとし、包括的な分析と計画策定によって実現できる戦略だ。

 

「適用型(Adaptive)」の環境では、持続的な実験が必要となる。変化が速く予測不可能なため、計画が機能しないからだ。

 

形成型(Shaping)」の環境では、企業は他社と協働して、他の利害関係者の活動を取りまとめることで、自分達に有利な業界構造を形成できる。

 

最後に、「再生型(Renewal)」の環境は過酷な状況であり、企業はまず生き残るためにリソースを節約・確保しなければならない。その後、成長軌道を回復して長期的な繁栄を実現するために、他の4つのアプローチからどれかを選択する。

 

簡単に言えば、各スタイルは最優先すべきことがまったく異なるのである。

・伝統型:大きくなれ

・適応型:速くなれ

・先見型:先行者になれ

・形成型:オーケストレーター(まとめ役)になれ

・再生型:生き残れ

正しいスタイルを選べば見返りがある。環境に見合った戦略を採用している企業は、そうでない企業に比べ、株主総利回りが4〜8%も上回っている。それ以外の企業の約半数では、戦略と環境に何らかのミスマッチが生じている。

 

 

事業環境に適した戦略を選ぶためにBCGが開発した「戦略パレット」の活用法

戦略の各スタイルを使いこなす方法と、それぞれが特定の環境でどう真価を発揮するかを、掘り下げて見ていこう。

伝統型(Classic)

伝統型の戦略スタイルを取るリーダーは、自分達の世界は予測可能であり、競争の基盤は不変であり、いったん手に入れた優位性はずっと有効だと考える。このような企業は、自力で環境を変えることは出来ないという前提に立ち、その範囲内で最適なポジションを獲得することを目指す。それを実現するためには、他社を上回る規模、差別化、ケイパビリティ(全体的な組織的能力、または得意とする組織的能力)が土台となる。

 

伝統型の環境ではポジションの優位性は持続する。その事業環境は予測可能で破壊的変化をきたすことなくゆっくりと進展するからだ。

 

この環境で最善のポジションを目指すリーダーは、次のような流れで考える。まず競争優位の基盤を分析する。そして自社のケイパビリティと市場との適合性(フィット)を検証する。そしてそれらが将来的にどう展開するかを予測し、優位なポジションを確立・維持するための計画を立てる。最後に、その計画を厳密かつ効率的に遂行する。

 

私たちにとって、もっとも馴染み深いのが、この伝統型戦略かもしれない。実際のところ、戦略とはこのアプローチを指すと考えている経営者は多い。ビジネススクールで教わるのも伝統型であり、大半の大手企業の戦略部門は何らかの形でこれを実践している。

 

適応型(Adaptive)

事業環境を予測することも変えることも出来ない場合、企業は適応型の戦略を採用する。予測が難しく優位性が長続きしない状況で、絶え間なく続く混乱を生き残るには、自らを変え続けていく即応性と能力を持つ意外に道はない。適応型の環境で成功するには、継続的な実験と新たな選択肢の発見を、他社よりも素早く低コストで行うことで変化に対応しなければならない。伝統的な戦略家が唱える持続的な競争優位の代わりに、ここでは一時的な優位性を連続させていくことが主眼となる。

 

適応型のアプローチを取る企業は、実験を通して成功するために、重要な3つの思考ステップをさまざまに用意し、手法をあれこれ変えながら試していく。そこから最も成功したものを慎重に選び出し、本格展開して利益獲得を目指す。そして環境が変わるたびに、この発展的サイクルを素早く繰り返すことで、優位性を継続的に更新していく。

 

適応型の戦略スタイルは、伝統型ほど入念に考え抜くものではない。優位性は分析、予測、最適化によってではなく、新たな物事を次々と試すことによって生み出される。

 

IT関連のサービスとソリューションを提供するインドのタタ・コンサルタンシー・サービシズは、予測することも変えることも出来ない環境下で活動する企業の1つで、同社は繰り返される技術的なシフト(例えばクライアントサーバからクラウドコンピューティングへの移行など)と、その結果として顧客のビジネスや競争基盤に生じる変化に、絶えず適応している。

 

環境の監視、戦略的実験、組織の柔軟性を重視する適応型アプローチを取ることで、同社の売上高は1996年の1億5500万ドルから、2003年には10億ドル、2013年には130億ドル超へと拡大し、純粋なITサービス企業としては世界第2位の規模に成長した。

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先見型(Visionary)

先見型の戦略スタイルをとるリーダーは、環境を主に自分たちの力で形成、あるいは再形成できると考える。先見的企業の勝利の鍵は、誰よりも早く斬新的な新製品やビジネスモデルを打ち出すことである。先見的なリーダーは、他者の目には不透明に映る環境において、新たな市場セグメントの創出や既存市場の破壊のチャンスを明確に見極め、その実現に向けて行動する。

 

このアプローチは、先見的企業が独力で、市場において新しくて魅力的な何かを実現できる場合に有効である。そうした企業は、他者に先駆けて新たなテクノロジーを投入したり、顧客の不満を招いている大きな原因や潜在的ニーズを最初に特定して対処したりできる。あるいは業界の古びたビジネスモデルを変革したり、来たる大きな潮流(メガトレンド)を誰よりも先に察知して行動を起こしたりもできる。

 

先見型の戦略を採用する企業にも、特徴的な思考プロセスがある。まず先見的なリーダーが、実現性のある有意義な可能性を思い描く、そして誰よりも早くそれを実現すべく、ひたすら努力する。最後に、その構想のポテンシャルを全て引き出すまで、実行と規模拡大に力を尽くす。

 

伝統型戦略における分析・計画や、適応型戦略における反復的実験とは異なり、先見型アプローチは想像と具体化を要とし、本質的にクリエティブである。

 

先見型の戦略スタイルを採用する企業の良い例が、医薬品開発のアウトソーシングサービスを担うCRO(医薬品開発業務受託機関)という分野を開拓した、クインタイルズ・トランスナショナルである。

 

医薬品開発業界の事業構造が安定しているように見えていた頃、同社の創業者兼会長のデニス・ギリングスは、まったく新しいビジネスモデルによって、医療品開発を向上できる明確なチャンスがあると見抜いた。そして1982年、彼にとって必然と思えたこのビジョンを実現すべく、いち早く創業。クインタイルズは素早く大胆に行動することでリードを守り、潜在的な競合相手のはるか先を進むことに成功した。

 

形成型(Shaping)

環境がどうなるか予測できずとも、変えることなら出来る場合がある。業界の発展初期には、競争のルールが規定 / 更新される前に、業界全体の構造を形成 / 再編する主導権を握る大きなチャンスがある。

 

このようなチャンスを活かすためには、他社との協働が求められる。1社が単独で業界を形成することは不可能だからだ。他社とリスクを共有し、能力を補い合い、ライバルが動き出す前に新規市場を確立する必要がある。形成型の企業が身を置く業界は、発展の初期段階にある。そして多数の協働者に影響力を行使しなければならないが、完全なコントロールは及ばない。そのため、環境の予測可能性は非常に低い

 

形成型のアプローチを取る企業は、他の共同者を巻き込んで適切なタイミングで未来への共有ビジョンをつくる。そして、協働を取りまとめるためのプラットホームを確立する。柔軟性と多様性を維持しながら規模拡大を図ることで、プラットフォームおよび協業者のエコシステムを発展させていくのである。

 

形成型戦略は、個々の企業よりもエコシステムを重視し、競争だけでなく協業も主眼とする点で、伝統型、適応型、先見型とは大きく異なる。

 

ノボノルディスクは1990年代以降、中国の糖尿病治療市場で勝つために形成型戦略を採用してきた。当時、中国では糖尿病の問題が顕在化し始めたばかりだったので、市場の行く末を正確には予測できなかった。しかし、同社は患者、規制当局、医師らと協業し、市場のルールづくりに影響力を発揮することに成功した。いまや同社は、中国のインスリン市場で60%以上のシェアを占めており、糖尿病分野の圧倒的な市場リーダーである。

 

再生型(Renewal)

再生型の戦略スタイルは、過酷な環境で活動する企業が生命力と競争力を取り戻すことを目的とする。このような厳しい状況は、戦略と環境とのミスマッチが長く続いたり、社内外で極めて衝撃的な出来事が発生したりした場合に起こりうる。

 

外的環境が非常に厳しく、事業運営を現行の方法では維持できない場合は、思い切って針路を変えることが必要だ。これは生き残るための、そしてもう一度返り咲く可能性をつなぐための唯一の道である。

 

企業はまず、環境の悪化をできるだけ早く認識し、反応しなければならない。その後、生命力を回復するために決然と行動を起こす必要がある。事業ポートフェリオの見直し、コスト削減、資本の保全などによって倹約を進める一方で、再起を図るための財源となるリソースを確保しておく。そして最終的に、ふたたび成長と繁栄を実現するために、他の4つの戦略スタイルから1つを選び方向転換することになる。

 

再生型は、3つの点で他のスタイルと大きく異なる。通常は防衛的な姿勢で始まること。そして、他の戦略スタイルへと転換する前段に位置付けられることだ。環境に適応できない企業が増えているため、再生型の戦略は次第に一般的となっている。

 

金融危機へのアメリカン・エキスプレスの対応は、再生型アプローチの良い例だ。信用危機が発生した2008年、同社は債務不履行率の上昇、消費者需要の減退、資本へのアクセスの困難化というトリプルパンチに見舞われた。これを生き抜くために、同社は約10%の人員削減、非コア事業の整理、補助的な投資の削減を実行した。2009年までに20億ドル近くこコスト削減を実現。そして新たなパートナーとの連携、ロイヤルティ・プログラムへの投資、預金拡大事業への参入、デジタル技術の導入を通して、成長とイノベーションに向けて舵を切った。2014年時点で、同社の株価は不況時の最安値から800%上昇している。

 

戦略パレットを活用する


戦略パレットは次の3つの目的で活用することができる。特定の事業要素に見合った戦略スタイルを選び、正しく実行するため。複数の事業要素、あるいは長期的な時間軸で、複数の戦略を適切に管理するため。そして、出来上がった戦略のコラージュが命を吹き込むためである。

 

戦略パレットは、特定の事業要素にふさわしい戦略スタイルを説明・選択するための新たな言葉をリーダーに提供するものだ。また、各スタイルにおける戦略の策定と実行を結びつける理論的な糸の役割も果たす。

 

大半の企業において、戦略の策定と実行は、組織的にもタイミング的にも不自然に切り離されている。各スタイルで求められる戦略の組み立て方は大きく異なり、実行の方法もそれぞれに特有である。情報管理やイノベーション、組織、リーダーシップ、企業文化の面で、要求される事柄が違ってくる。

 

戦略パレットは企業にとって、戦略的意図の指針になるだけでなく、実行体制を整えるうえでも役に立つ。

戦略パレットによって、事業をより精緻に把握できるようになる。特定の戦略を必要とする複数の事業要素に分解できるからだ。そして異なる事業部門、地域、ライフサイクルの段階に応じて、複数の戦略を効果的に組み合わせることも可能になる。

 

今日の大企業は、非常に幅広く変化の激しい環境で事業を展開している。ほとんど全ての大企業が、戦略的特徴の異なる複数の業種や地域に手を広げており、それゆえ複数の戦略を同時並行で進めることを迫られているのだ。進歩の速いテクノロジー部門に適したアプローチが、より成熟した部門のアプローチにも適しているはずはない。また同じ事業であっても、急成長中の国と、より成熟した国とではアプローチが大きく異なる。

 

事業にもビジネスモデルにも必ずライフサイクルがあり、各段階で異なるアプローチが必要だ。事業の創出は通常、戦略パレット上の先見型か形成型の領域で起こり、その後に適応型を経て伝統型へとシフトしていく、さらなるイノベーションによって破壊的変化を受ければ、そこからまた新しいサイクルが始まる(もちろん、実際にはさまざまな道筋がありうる)。

 

例えば、アップルは、先見型の戦略によってiPhoneを生み出した。次に形成型戦略を採用して、アプリ開発者、通信会社、コンテンツプロバイダーと協働するエコシステムを発展させた。そしてこの先、より包括的な製品・サービスを携えた競合他社がそのポジションを狙ってくれば、アップルの戦略は適応型、あるいは伝統型の方向に変わるかもしれない。

 

戦略パレットの活用時には、リーダーがみずから環境と戦略の組み合わせを設定し調整するという重要な役割を果たす。環境を見極め、どの戦略をどこに適用するかを決め、それを実行するための適切な人員を配置するのがリーダーの仕事だ。

 

それだけでなく、出来上がった統合的な戦略をストーリーにして、内外に広め説得する際にもリーダーの働きが重要となる。複数のアプローチを組み合わせた戦略のコラージュに命を与え続け、動的で新鮮な状態に保つために、リーダーには次のことが求められる。適切な問いを立てること。支配的論理によって視野が曇るのを防ぐために、前提を疑うこと。そして必須となる変革の取り組みを、全力で支援するとである。

 

ではまた。See you next time・・・